REACHとはRegistration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicalsの太字部分を略したもので、REACH規則は、2007年6月1日に発効した化学物質の総合的な登録、評価、認可、制限の制度です。

 REACH規則の目的は、「人の健康と環境の保護」、「EU化学産業の競争力の維持向上」などであり、化学物質のほとんどすべてを対象としています。
 この規則は、従来の40以上の化学物質関連規則を統合するものであり、従来の規制と相違するREACH規則の内容としては次のような項目があげられます。
リスク評価や安全性の保障責任を産業界に移行する
既存化学物質と新規化学物質の区分を廃止する
川下企業にも安全性評価の責任を負わせる
有害化学物質の情報はサプライチェーン全体に伝達する
利用が可能であれば、より危険性の少ない物質へ代替を奨励する
 REACH規則の「登録」、「評価」、「認可」、「制限」、「情報伝達」の概要は次の通りです。

製造者または輸入者は、化学物質をEU域内で年間1t以上製造、または輸入する場合、既存化学物質、新規化学物質に関わらず登録を行うことを義務付けられています。
2008年6月1日からは、化学物質を、年間1t以上製造または輸入する場合は技術一式文書を、年間10t以上製造または輸入する場合は、技術一式文書に加え化学物質安全性報告書(CSR)の提出が必要となります。
登録対象となるのは化学物質そのものです。塗料等の調剤の混合物は、それを構成する化学物質が登録対象になります。ポリマーは登録対象ではありませんが、それを構成するモノマーは登録対象になります。さらに、ある条件では成形品中の化学物質や中間体などが登録対象になります。
登録義務のある者は、EU域内の製造者・輸入者、もしくはEU域外の製造者が指名するEU域内に拠点のある「唯一の代理人」です。
既存化学物質などの段階的導入物質は予備登録を行うことで、生産量・物質の有害特性により登録期限に猶予が設けられています。
同じ物質を複数の製造者、輸入者が登録する場合、物質に関するデータを共有することが求められています。段階的導入物質の予備登録者は同一物質の予備登録者で構成される物質情報交換フォーラム(SIEF)への参加が義務付けられます。

 登録一式文書の評価と登録物質の評価が行われます。
登録一式文書の評価では「登録一式文書の法令適合性の点検」、「試験提案の審査」が行われます。
CMR(発がん性、変異原生、生殖毒性があるとされる物質)、PBT(難分解性、生物蓄積性、毒性のある物質)やvPvB(極めて残留性・蓄積性の高い物質)などの高懸念物質や年間100t以上の広範囲かつ拡散的なばく露をもたらす用途の危険性に分類される物質の登録の試験提案は、優先的に審査が実施されます。
登録物質の評価では「有害性情報の考慮」「ばく露情報の考慮」が行われます。
化学品庁は期限を定めて、追加試験の実施又は追加情報の提出を求めます。

高懸念物質を使用、または上市する場合、特定された用途ごとに化学品庁の許可を得る必要があります。
高懸念物質の認可は取扱量が1t未満であっても適用されます。
製造者、輸入者、川下企業は、高懸念物質の代替物質、代替技術を考慮しなければなりません。

人の健康や環境にとって、受け入れられないリスクのある物質の製造、上市および使用は、EU全域で制限条件を付けたり、必要があれば禁止します。

化学物質を安全に使用するという目標を達成するためにはサプライチェーン上での情報の伝達が不可欠です。
川上企業から川下企業へ物質・調剤中の物質の情報提供は、安全性データシート(SDS)によって行われています。これに加えて、年間10t以上登録の危険性、PBTやvPvBの物質では、ばく露シナリオをSDSの附属書として提供する義務が規定されました(拡張されたSDS)。
川下企業は川上企業へ、化学物質の新しい有害性情報やSDSの特定された用途の管理対策に疑念がある情報を提供することが義務付けられました。
高懸念物質が成形品中に0.1wt%を超えて含有される場合には、成形品の供給者は川下企業に対して、また、消費者から要求がある場合は45日以内に無料で、その成形品を安全に使用できる情報(少なくとも物質名)を提供する義務があります。
 REACH規則の施行時期は、条項ごとに異なり、各条項の施行時期に従って、従来の規則・指令は順次、統廃合されます。






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